立山開山に関するお話
8 如来様
寒さと
空腹
のため、今にも
倒
れそうになりましたが、くちびるをかみしめ、雪の上に点々と残っている血の
跡
をたどり、
崖
の
中腹
にぽっかりあいた
洞穴
にたどり着きました。《
玉殿
の
窟
(岩屋)
》
「しめた。この洞穴
にこそ、大事な
鷹
を
逃
がした、にくき
大熊
がいる。今度こそ、
必ず
射止
めてやるぞ」
弓に矢をつがえ、一歩一歩と、注意深く洞穴
に
踏
み
込
みますと、これは
驚
いた!
有頼
の目に入ったのは、
逃
げ
込
んだはずの
大熊
ではなく、さん
然
と
黄金色
に光
り
輝
く、美しい
阿弥陀
如来
様のお姿でした。しかも、その仏様の左胸には
大熊
を
射
たあの矢が深く
突
き
刺
さっていましたが、にこにこ笑っておいでになるではありませんか。
あまりのことにびっくり仰天
しまして、
「熊とばかり思って追いつめたのは
仏様
でしたか。本当に悪いことをしました」
と、その場にひれ伏
しました。
そして、その夜は、その洞穴
で通夜をしてお
詫
びをすることにしました。
すると、有頼
の耳もとに、仏様はさしくお話になりました。
「私
は、
阿弥陀
如来
である。
私は、この立山に
地獄
を
造
り、
極楽
も
造
りました。立山に登れば、人々はいろいろな
悩
みから救われます。とても
尊
い
山なのです。けれども、立山はまだ誰にも知られていません。登る道もありません。
多くの迷っている人々を救うため、姿をかえて、
白鷹
になり、
大熊
になり、時に
はサルや大シカ、そして
雷獣
となり、そなたをここまで呼び
寄
せたのです。そな
たは、本当に力強い頼りになる男です。どうかこの立山を開いて、国中の人がお参りできるように、
一生懸命
つとめてください。それが
大汝
の神の子であるそな
たのつとめなのです。」
仏様
のありがたいお言葉に、強く心をうたれた少年
有頼
は、さっそく
城
に帰り、
父にこの話をしました。
すると父は、有頼
の勇気に感心して、
白鷹
を
逃
がしたことを許したばかりか、
有頼
にいっそう
修行を積ませました。
有頼
は弓矢を捨て、髪を
剃
って
仏門
に入りました。そして、『
薬勢
上人
』とい
うえらいお
坊
さんに教えを受け、名を『
慈興
』と改め、
信仰
の道に
精進
しました。
そして
仏様
との約束通りに、草木をはらい、岩石を取り除き、
険
しい坂に道を
つけ、その
頂上
に社を建てました。
さらには、ふもとの芦峅
寺や
岩峅
寺にお寺を建て、
信仰
としての立山を開くた
めに、その一生をささげました。
「しめた。この
弓に矢をつがえ、一歩一歩と、注意深く
あまりのことにびっくり
と、その場にひれ
そして、その夜は、その
すると、
「
すると父は、
さらには、ふもとの
9
玉殿
の
窟
(
岩屋
)
これが立山を開いたといわれるお話です。
大熊
が逃げ込んだという
洞穴
は、
玉殿
の
窟
(
岩屋
)といって、立山の
地獄谷
のあるそばに
残
っています。
そして、
芦峅寺
にある
雄山
神社
には、『
慈興上人
』のお
像
とお
墓
が今も
残
っています。
めでたし! めでたし!
めでたし! めでたし!
