立山開山伝説（小学生用）

　  熊 くま がたらした血のあとをたどっていくと、 室堂 むろどう 近くの 玉殿 たまどの の岩屋という 洞窟 どうくつ に着 きました。 「しめたぞ、この 洞窟 どうくつ が 熊 くま の住みかだな」 有頼 ありより がそっと 奥 おく の様子をうかがうと、 闇 やみ の中からパッとまぶしい光が目に 飛 と び 込 こ んできました。 有頼 ありより が 驚 おどろ いてよ く見ると、そこには 熊 くま でなく 阿弥陀 あみだ 如来 にょらい の 姿 すがた が見えました。 しかも、 阿弥陀 あみだ 如来 にょらい の 胸 むね には自分の放った矢が立っていて、 血が流れていました。 有頼 ありより はあまりのできごとに 驚 おどろ いているうちに、 疲 つか れも出てきて 夢 ゆめ うつつの 状態 じょうたい になりました。 その 夢 ゆめ うつつのなかで 仏 ほとけ のお告げがあって 「 私 わたし は、けがれた世の人びとを救うために、この山に 地獄 じごく も 極楽浄土 ごくらくじょうど もすっかりとりそろえて、 お前を待っていたのだ。 父の 有若 ありわか を 越中 えっちゅう 国守にしたのもそのためであり、 剱岳 つるぎだけ の 刀尾天神 たちおてんじん が 白鷹 しらたか に 姿 すがた を変えたり、 私 わたし が 熊 くま に 姿 すがた を変えて、お前をここまで 導 みちび いてきたのだ。お前は本当に力強い 頼 たよ りになる男だ。 どうかこの 霊山 れいざん に道を開いて、 誰 だれ でも山に登られるよ うにしてほしい」 と命ぜられました。 感激 かんげき した 有頼 ありより は、いったん下山して、 慈朝上人 じちょうしょうにん というえらいお 坊 ぼう さんから教えを受けて 僧 そう となり、 慈興 じこう と名のりました。 そして立山を開き、 立山 大権現 ごんげん の大宮などを建て、立山 信仰 しんこう を広めたといわれています。
(この開山伝説は、 江戸時代 えどじだい の 「 和漢三才図会 わかんさんさいずえ 」の中の 記述 きじゅつ をもとにしています。)